2002.3.15(金) 木更津キャッツアイ 9回表・裏、10回延長

“Bussan” survived tenaciously for more than one year
and passed away at twenty-two.

冒頭、ぶっさんの3回忌の話をしながら海辺を歩く4人とマスターの子どもたち。
いきなりそこから始まるのね。
野球のユニフォームを着た末っ子がこけ、マスターが「公平くん」と呼びながら駆け寄る。
あららら。子どもに死んだ人の名前を付けるなんて、クドカンらしからぬベタな展開。

時間は遡り、再び現在へ。
情緒不安定になって一人で泣いているぶっさん。
病気のことを知ってしまった美礼先生が言う「生きてる人間が、死んだ人間に頼るなんて、かっこわるいし傲慢だわ」のセリフ。
このあたりで既にうるうる来て、普通にぽろぽろ泣いてしまいました。

しかし、このノリのままでは進まないのが木更津です。
この後の上京編、面白すぎでした。
「心配なんだ。おれ、東京で変わっちまうんじゃないかって」
変わるかよ!
と思いましたが、確かに変わってしまいました。サルに。
サル化したぶっさんさいこー。動きが変すぎー、ひーーーー。
回を追うごとに、いい感じに壊れていったぶっさんですが、最終回で完成型に達した感がありますね。
「靴買ってあげるからー」って泣きそうになってるバンビもかわいかった。

靴を買ってもらって人間に戻ったぶっさん達は、東京で、昔の知り合いで今はプロの山田君に再会。<夜のバットは十割バッター>な山田君の尻拭いをすべく、奔走する木更津キャッツアイ。
さくさく仕事をこなしていることにびっくりしました。いつのまにか、泥棒の腕が上がってたんだね。
山田君の30代のはっちゃけぶりにも笑いましたが、「そのセーター、だせえ!」ってはっきり言われているところにも笑いました。
ぶっさんに言われてはおしまいというか。

なぜか山田君になつくうっちー。ぶっさんと同じにおいを山田君に感じたのかしらん、と、あやしげな深読みをつい。
サラリーマン早調べクイズで、ちゃんと教えてもらったのに
「かにたまどん」
って答えてしまううっちーに地味に笑いました。
このあたり、あまりのギャグのテンポの良さに、さっきまで泣いてたことも、最終回だということも本当に忘れて、いつものようにほけほけ笑ってました。

あ、今日ぶっさん死ぬんだった、と思い出したのは野球狂の詩に帰ってから。
砂浜で倒れたまま動けなくなるぶっさん。
その後、みんなに支えられながら野球の試合に参加。
正直ありがちだと思ったけど、さすがに最終回ではこういうのもやるんだろうなあと。そして1話の冒頭のシーンへとつながります。

しかしこの後の集中治療室でのシーンは、主役が死ぬドラマの常識を覆す、ベタからはほど遠い名場面でした。
このシーンだけでもこのドラマは伝説になるかもしれない。
音声抜きの予告だと普通にシリアスなシーンだったのに、本編で音声が入ったとたん、抱腹絶倒のお笑いシーンに変化。

ぶっさんじゃないけど、お前らほんとむかつく。
どいつもこいつもそろいもそろって、人が死にかけているっていう時に、なんて自己中心的なんだ。みんな自分のことしか言ってないし。
それに対する、ぶっさんのツッコミが冴えまくってました。腹痛い。

マスター「死んだ?」
バンビ「まだ」
やめてよもう。面白すぎるよ。
美礼先生「いろいろな仲間がいて、良かったね」
普通のドラマだったらこれは泣かせのセリフのはずなのに、この状況で聞くと、とてもとても空々しく聞こえるのがおかしい。
これはコントの世界だ。凄い。いまわの際のシーンで、こんなコントが出来るなんてっ!
さじ加減が絶妙。ぎりぎりのところでドラマの領域に踏みとどまっている。

美礼先生「短い人生だったけど(略)」
まだ死んでないって。
本人にそんなこと言っちゃだーめだって。もの凄くぶっさんが不幸みたいじゃない。いや、不幸なんだけど。
だめだ。ぶっさんじゃないけど、いちいちツッコミを入れたくなってしまう。
ああもうっ 泣いたらいいのか、笑った方がいいのか分かんねえっ!
涙が出かけては、笑ってしまって引っ込むの繰り返し。

モー子「先生、肩に何かついてる」美礼先生「あら・・・」
ぶっさん「(しじみがとれて)ほんっと、良かった」
そこでかよ。そこで言うのかよ。

しかし結局、ぶっさんはみんなに看取られながら息を引き取るわけです。
さすがに最終回では、多少(どころではなかったが)笑いがあったとしても、オーソドックスに終わるんだね。
と思ってました。この時点では。

だまされた。

このベタな展開自体、その後のどんでん返しをするための前フリだったのですね。
ふ。私は一体どれだけだまされたら気がすむのだろうね。
(裏に突入するのが早いなあ)
ということに気づいた時点で、延長戦の可能性は思いついてしかるべきだったのにっ!

棺の中から何故かでてきたうっちー。
「しまっていこうぜー」と何故か山田君のユニフォームを着てかけ声をかけるぶっさん。
そして10回延長へ。

ぶっさんの目がばちっと開いて(目でかすぎだよー。作り物みたいで怖い)、ゾンビのように起きあがったシーンを見て、
(幽霊? 幽霊なのっ? まさか予想が当たっちゃったの? ラストはオジーの幽霊とキャッチボールていうオチなの?)
と、あわあわしてしまいました。
が、どうやら本当に生き返った模様。
えーっ、そんなのありー? 
サブタイトル<俺まだ死ねねえや>って、本当にその通りの展開になってしまった。なんてことー?

そして、中止になっていた木更津二校との練習試合再開。
容赦なくぼこぼこにされているキャッツチームが、いとあわれ。
兄の意地で弟からヒットをもぎ取ったアニに、ぶっさんが
「ナイスバッティング、ひろひさ!」
「ぶっさん・・・」
「何年付き合ってると思ってるんだよ。ちゃんと覚えてるよ」
おおっ! もうぶっさんたら、シャイなんだからー。
球場に来る車のなかで必死で思い出してたんでしょ?

「・・・ちがうよ」
「え?」
「ひろひさじゃねえよ。そりゃあれだろ、松沼兄の下の名前じゃねえかよ!」
「?・・・・あーーーーーっ!」
「もういいっ」

あははははー。そういうオチか。アニかわいいなー。最後までかわいかったなー。

そして
<それからぶっさんは1年以上しぶとく生き延び、22才でこの世を去りました>という英語のナレーション。
なるほど。確かに「そうきたか」って感じだよ。

時は過ぎ3ヶ月後。
相も変わらず野球狂の詩でビールを飲む5人。その隣には新マスターJr.の<公平君>

「あそこで死んでりゃ、ぶっさん伝説になれたのにな」
確かにそうだね。そういう綺麗な終わり方の物語はいくらでも転がってるよね。
でも、かっこわるく生き延びて、拾いもののように得てしまった時間を、すっかりぶっさんの死に「馴染んで」しまった仲間達と過ごすのだって素敵じゃないか。
最期の言葉が「おまえらさ、ほんっと、むかつく」ではあんまりだし。
前、美礼先生の「かっこわるくたって、生きてる方がいいじゃない」というセリフを、私は残酷だと書いていたけれど、今にして思えばこれも伏線だったんだね。
こうして考えてみると、もの凄く考え抜かれて作られた脚本だったんだと感心する。

ラストショットは、オジー像にのったぶっさん像に
「ちっちゃっ!」と言うぶっさんのアップ。
ドラマが終わった瞬間は、なんだかはぐらかされてしまったような気は確かにしたんだけど、最後の5人の集合写真を見た時に、ああ、この終わり方は木更津という物語にとっては、やっぱりベストだったんだな、と思いました。

ぶっさんの死は、はずさない。
だけど、時間軸を複雑に変化させて、9話冒頭3回忌のシーンや、8話ラスト、ぶっさんが残したノートがでてくる場面を前に持ってきて(この二つのシーンはどちらがラストショットでもおかしくない)、彼らに残された幸せな時間を最後に持ってきた。
その結果、物語の後味がもの凄く良いモノになった。
本当に木更津らしい、素敵なラストだったと思う。

終わってしまったのに、最終回最高! って心から思えて、このドラマに関わった全ての人に感謝したくなったドラマは初めてでした。
視聴者にもスポンサーにも媚びず、最後まで木更津イズムを貫いた人たちに乾杯。
3ヶ月間、とてもとても、楽しかったよ。
ありがとう。みんな大好きだ。



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